インドネシアで仕事をする時の小話的アドバイス 【信用出来ない領収書】
インドネシアの工場に赴任して間もない頃はまだ小さな工場で、少し大袈裟に言うと、現場の直接作業以外は何でも自分で処理しないといけない仕事環境でした。そのため、ちょっとした設備を自作する時に必要な部品や工具を求めて、電気製品や機械を扱っている市場にも時々足を運びました。
そこでは代金はもちろん現金ですが、ほとんどの店員が『空伝にするか?』と聞いてくるのです。判り易く言うと、金額のところを空欄にしておいて、後で自分の好きな金額を記入して、実際の金額との差額を着服する方法を望むかと聞いて来るのです。もちろんお断りして実際の金額を記入してもらったのですが、どうやらそれは広く行われている商慣習だと気が付いたのです。
その後、工場の規模が大きくなった際には、現金払いに纏わる事故を避けるため、支払は銀行口座振込か小切手を基本としたのですが、冒頭のような市場での買い物はどうしても現金払いが前提となるため、なるべく正直な社員をその仕事に当てるようにしました。しかし、運転手がガソリンを入れて来た時の領収書や、政府機関の窓口で支払われた申請手続料金の領収書などを目にするたびに、『空伝にするか?』という問いかけを思い出し、そうかと言って逐一問い詰める訳にも行かず、結局は許容範囲内にしようと、勝手に自分で納得していたものでした。
しかし、問題は現金払いの場合だけではなく、銀行口座振込であっても、納入業者から購買担当者に対して、色々な形での便宜が供与されているとの噂は、絶えず聞こえて来ました。購買担当者に対しては、就業規則の中にある関連規定を良く説明し、もし不正が発覚した場合はどうなるか肝に銘じてもらっていたのですが、実際は皆無という訳にはいきませんでした。これはインドネシアに限らず、日本でも同じように起きていることですから、インドネシアだからという訳ではありませんが、日本よりは誘惑の機会は多いように思います。
2004年の直接選挙で大統領を輩出した民主党は、度重なる党幹部の汚職問題で危機的状況に直面しており、堪忍袋の緒が切れた大統領が党首を解任して、自分が直接統治すると宣言する事態まで来ました。傍から見ているとみんなで渡れば怖くない、やらなきゃ損みたいな風潮すら感じられます。根は深く広い・・・そんな印象です。