現地スタッフの教育はサプライチェーンプロセスを軸足にすべき
日本企業は海外に進出すると、日本式のマネジメント方式を現地社員に植え付けるために、多くのリソース費やします。私の場合もそうでした。安全衛生に始まり、品質管理、原価管理、そして小集団活動など最盛期には50科目くらいの研修コースを設定し、全ての従業員を対象にインセンティブを付けて参画させたことを思い出します。実は自分も一緒になって勉強していたことも結構ありました。あの頃の取り組みは決して無駄ではなかったことは、そこで勉強した人間が、現在は本格的に生産拠点となった複数の会社の幹部や重鎮として、活躍しているとの頼りを聞くことで確信しています。
しかし、帰国してから別の業務分野、すなわちサプライチェーンマネジメントの世界に入ってから判ったことは、当時の仕事の進め方は大所・高所から見て、理論的かつ体系的に構築されていなかったということです。私が帰国した翌年に、アメリカで設立されたある団体が普及させ始めた考え方によると、会社の仕事はその中核をなすサプライチェーンを階層構造化されたプロセスで捉え、そのプロセスをベースに業績を評価し、そしてプロセスに対する改善策を考えるというものでした。
このように表現すると何か難しいことにように思われるかもしれませんが、要するに、仕事の中味を誰が見ても判るように体系的に可視化しましょうということです。この考え方を基に自分の駐在時代を思い出してみたところ、基盤になるプロセスの可視化をすることなく、ひたすらに改善のための仕組み作りに没頭していたことに気が付いたのです。これはあたかも町内の地図を頼りに世界旅行をするようなもので、目の前のことに対処するには間に合うかもしれませんが、気が付いたら北上しているはずが実は南下していた、なんてことになりかねません。
では、さまざまな研修コースに参加していた現地社員はどのように感じていたのでしょうか。昇格の一つの条件とされていましたから、その観点からは皆必死だったように記憶しています。しかし、前述のサプライチェーンプロセスベースで云々の観点かしてみれば、これもただひたすら様々な管理手法や改善手法を個別に詰め込まれていたのが実情でしょう。多くの町内会地図を渡されて、とにかく最短距離で世界旅行をしろと言われている様に感じたのではないかと危惧しています。なぜ世界地図を渡すことに気が付かなかったのか。町内会の地図をつなぎ合わせれば世界地図になる・・・小さな改善が大きな成果を生み出す・・・いわゆる日本が得意とするボトムアップの志向に支配されていたからです。
しかし、当時はまだ若かった自分も含めて、現地の社員教育に、階層構造化されたサプライチェーンプロセスをベースにした研修カリキュラムが組まれていたら、もっともっと本質を捉えた、大所・高所から仕事を組み立てられる人材が育っていたのではないかと、後悔先立たずの思いです。
そんな思いを込めて、もし要請があれば、上記の趣旨の研修をインドネシア語で行います。