インドネシア進出問答集 労働法編-1 就業規則はどうやって作るのか
社長:立上当初に雇用する社員に対して、どんな形で給与や勤務時間などを決めれば良いのでしょうか?
小野:社員一人一人と雇用契約書を交わすのが正しい方法ですが、その基準となる就業規則がまず必要となります。労働法でも10名以上を雇用する場合は作成を義務付けられていますが、外資企業では人数に関係なく作成しなくてはなりません。
社長:インドネシアの事情が良く判らないので、日本本社のものを参考にして作ることは可能でしょうか?
小野:それは避けるべきです。インドネシアの就業規則に記載すべき項目は規定されており、細則についてもインドネシア労働法に沿っていないと労働移住省から正式に認可されません。幸い、見本となるべき雛型が公開されていますので、それを参考にして自社のものをつくるべきです。
社長:記載すべき項目としてはどんなものがありますか?
小野:雛型の章立は以下のようになっています。
第1章 一般規則
第2章 雇用関係
第3章 従業員の権利および従業員の義務
第4章 従業員に対する禁止事項
第5章 役職
第6章 従業員の能力開発
第7章 給与
第8章 福利厚生
第9章 業務出張
第10章 稼働時間および就業時間
第11章 休暇
第12章 処罰
第13章 雇用契約の解除
各章の詳細も労働法の関連規定にて細かく定められていますので、支払金額や福利厚生の面を除いて、独自色を出せるような余白は、はっきり言ってほとんどありません。インドネシア語での作成のみ認められていますが、内容の理解のために、就業規則だけでなく、インドネシア労働法の日本語訳も用意してあります。
社長:インドネシアの労働法は世界一労働者に甘いと聞いたことがありますが、本当でしょうか?
小野:多分本当でしょう。労働法を読んでみると判りますが、賃金や手当の単価は日本と比べて小さい代わりに、資本家による不当な雇用から労働者を護るための規定がたくさん組み込まれています。但し、2012年11月30日に、ユドヨノ大統領が賃上げや雇用体系改善を求める労働者の大規模なデモを受けて、『安価な労働力の時代は終わった』と明言したことから、これまでのように世界一労働者に甘い環境を継続するのは、逆に次第に難しくなると予想されます。