インドネシア進出問答集 カントリーリスク編-1 1998年のような暴動が再発する危険性はあるのか
社長:1998年の暴動の際は多くの日本企業が操業停止や帰国措置を取ったと聞きますが、またそのような事件が起きることはないでしょうね?
小野:絶対に無いと断言は出来ませんが、当時とは政治体制が大きく変わっていますので、当時と比べると可能性は低いと言えるでしょう。
1998年の暴動は、その前年にアジア通貨危機が発生し、インドネシアでも物価の急増などで生活が追い詰められた民衆と、それに抗議した学生デモに対して何者かが発砲して死傷者が出たことが直接の原因でした。その責任を取って30年間にわたり独裁政権を続けたスハルト大統領が辞任に追い込まれました。
その後、短命の大統領が3人登場するのですが、2004年に初めての国民の直接投票により選ばれた、現在のユドヨノ大統領が推し進めて来た、民主化と経済政策が功を奏していると思われます。
社長:あの暴動の時には、多くの中国系インドネシア人が迫害されたそうですが、今でも彼ら華僑は以前と同じような境遇にあるのでしょうか?
小野:確かに華僑と呼ばれる中国系インドネシア人は、人口に占める割合は3%くらいですが、昔からインドネシア経済の90%を支配しているとされ、永い間インドネシア人から反感を持たれていたので、あのような暴動が起きると真っ先に攻撃の対象にされて来ました。
暴動の直後は彼らの多くが他国に移住したり、資本も国外に移したりしたと聞いています。
しかし、現在もインドネシア経済は依然として華僑資本に支配されています。そればかりか、以前は禁止されていた中国語のメディアが堂々と登場するようになり、2012年秋の選挙では首都ジャカルタの副知事に中国系インドネシア人が当選しました。
これらも現大統領の推し進めて来た民主化の成果であると思います。