インドネシア進出問答集 労働法編-2 雇用契約の形としてどんなものがあるのか
社長:インドネシアでは派遣社員制度の廃止を求めてデモが繰り広げられていますが、なぜ問題になっているのでしょうか?
小野:雇用者側は派遣社員を必要な期間だけ最低賃金レベルで使えるというメリットがあるため、急激に普及して来ました。但し、例えば工場では主体業務の生産ラインなどに配置することは禁止されており、あくまでも補助業務に限られています。しかし、実態は多くの企業でそれを守らないで、正規社員に較べて遥かに安い賃金で正規社員と同じ仕事をさせて来たことが労働組合から指摘されている訳です。
社長:この制度が廃止されると、全て正規社員として雇用しなくてはいけなくなるのでしょうか?
小野:制度が廃止されることは無いでしょうが、活用出来る仕事の種類が、守衛、配膳、運転手などに、明確に限定される見通しです。実は正規社員の他にもう一つの雇用形態があります。それは試作業務など、期間が限定されている仕事に限って利用出来る制度で、期間契約社員とも呼ばれています。
社長:契約期間はどのように規制されているのでしょうか?
小野:1回の契約期間は最長で24ヵ月、契約延長による契約期間は最長で36ヵ月。但し36ヵ月を経過した時点で30日間の猶予期間を過ぎた後に、1回に限り最長24ヵ月間の契約更新が出来るとなっています。
社長:諸手当や有給休暇などの福利厚生は正規社員と同様にしなくてはいけないのでしょうか?
小野:同様にすることは構いませんが、義務はありません。契約期間が12ヵ月未満の場合は有給休暇の供与義務もありません。ですから、仮に契約を11ヵ月×3回と更新後の11ヵ月とした場合は、最低賃金だけで雇用することも出来る訳です。
社長:これに対しても労働組合から問題視される危険はありませんか?
小野:今のところ労働組合も期間契約雇用は認めるとしています。インドネシア全体ではかなりの割合で期間契約雇用されているため、もしこれを廃止した場合は多数の失業者を生み出す恐れがあり、労働組合もそこまでは踏み切れないものと思います。
社長:期間契約雇用の途中で正規社員に登用することは出来るのでしょうか?
小野:もちろんです。途中でなくても、契約期間の延長または更新の度に、勤務態度や能力に応じて、ある一定の割合で正規社員に登用する制度を設けることで、優秀な人材を発掘することがあります。但し、逆に正規社員に登用されて解雇の可能性が少なくなった途端に、勤務態度が低下する場合もあることを予め承知しておくべきでしょう。
社長:正規社員として採用した場合は解雇が難しくなるのでしょうね。
小野:当初3ヵ月の試用期間中は解雇が自由ですが、それを過ぎるとなかなか難しくなります。しかし、対処方法はありますので、それについてはまた別途お話ししたいと思います。