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04.02.2013 出島『海外ビジネスコラム』原稿

インドネシア進出問答集 カントリーリスク編-3 イスラムのテロは脅威ではないのか

社長:インドネシアは世界最大のイスラム国家と言われていますが、アラブ地域で起きているようなテロの危険はないのでしょうか?

小野:今の世の中でテロの危険が無いところなど皆無でしょう。極論はさておき、インドネシアは全国民約2億4千万人の90%がイスラム教徒ですから、確かに世界で一番イスラム教徒の多い国であることは確かです。しかし、ここが意外に皆さん誤解しているのですが、インドネシアはイスラム教国ではありません。約60年前にオランダから独立した時に定められた建国五原則でも、唯一の信仰を持つことは義務付けられていますが、イスラム教を強制している訳ではありません。その証拠に国民の祝日には、イスラム教、キリスト教、仏教、そしてヒンズー教の祭日が当てられているのです。

社長:しかし、実際はほとんどの人達がイスラム教徒であることには変わりはないですね。

小野:確かに今の日本では考えられないくらい、生活の中にイスラムの教えが浸透しています。一日5回の礼拝、毎年の約1ヵ月間にわたる断食、そして日々の挨拶に使われるアラビア語でのアラーを讃える表現などは、私達日本人には正に異文化と映るでしょう。

社長:やはり異教徒である私達日本人はイスラムについてあまり触れない方が無難ですよね。

小野:私は決してそのようには考えていません。インドネシアは一部地域のイスラム教徒を除いて、いわゆる穏健派と言われるスンニ派の人達です。預言者ムハンマドの後継者はその血筋を引く者でなくてはならないとするシーア派、または世界はイスラムの教義に基づくべきであるとする原理主義派と異なり、現実的な生き方をしている人達です。私も駐在時代は彼らから『イスラム教の教義は自分とアラーとの約束事であるから、特に気を使ってもらう必要は無い』と言われたものです。ですから断食中に彼らの前では飲食を遠慮するようにしていたのですが、それは必要ないと逆に諭されたこともあります。また、インドネシア人の従業員と宗教談義をしたことも何度もありましたが、彼らから特に異教徒扱いをされた記憶はありません。

社長:大分安心して来ました。思ったほど危なくはないようですね。

小野:しかし、同じイスラムのアルカイダと協調するテログループもインドネシア国内に潜伏していることも事実で、2012年にはバリ島で自爆テロが発生し、多数の外国人観光客が犠牲になっています。その後もジャカルタにあるアメリカ系の豪華ホテルを襲った自爆テロが続けて起きており、今でも都市部の外資系ホテルやオフィスビルに入る際には、空港と同じようなセキュリティーチェックを受けることになります。暫くはアメリカ系のホテルや企業が入っているビルは出来るだけ避ける方が無難でしょう。

社長:従業員の採用に際して、このことを特に注意する必要はありませんか?

小野:日本人がこの問題にあまり深入りし過ぎるのもどうかと思います。やはりこの種の問題はインドネシア人の人事労務マネージャーに対処してもらうのが自然でしょうね。

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