インドネシアで仕事をする時の小話的アドバイス 【最新の技術と設備は社長の道楽?】
樹脂成型の仕事を依頼していたある会社の社長から、最新の機械を輸入したので是非見てくれとの誘いを受けました。ドイツ製の機械だったと記憶していますが、工場の中の仕切られた部屋の中にぽつねんと置かれていました。コンピュータ制御とのことで、社長は一生懸命プログラムを入力してから実際に何かの見本を加工して見せてくれました。
その社長の話によれば、最新の機械をいじるのが大好きで、衝動買いをしてしまったので何か仕事はないかと探しているとのことでした。仮に仕事があても、誰がこの機械を操作するのかと聞いたところ、他の人には触らせないと言い張る始末でした。
近くの鋳造工場は初老の女性社長で、日々の管理は娘婿の工場長に任せていました。外注委託するにあたり、日本の工場見学に招待したのですが、これは失敗でした。帰国するなり工場の大改造を行うと張り切ってしまったのです。現状のままで設備投資にお金をかけないで、安く作ってもらうのが元々の主旨だからと、なんとか止めさせようとしたのですが、お金は自分が出すのだからと主張して、すぐに工事を始めてしまいました。
その工場には昔から働いているベテランの鋳物職人がおり、彼が若い工員を指導して、ある程度の製品を作っていたのですが、作業環境が大きく変えられてしまったため、経験だけで仕事をして来た彼らは混乱するばかりでした。工場長の娘婿は大学の工学部を出ているため、理論的には色々と対策を考えるのですが、肝心の現場の職人と意志疎通が出来なくて、以前のペースで物を作れるようになるまで、かなりの時間を要した次第でした。
インドネシアの現地資本製造業のほとんどは華僑企業ですが、人の育成よりも最新の機械に金をかける社長が多かったように思います。従業員が千人を超えるようなかなり大規模の工場でも、工場長クラスはアメリカの大学でMBAを取得した親族の一員で、監督職クラスは現場生え抜きの優秀なインドネシア人で、それなりに優遇されているようなのですが、実際に作業をしている人間に対して何か教育をしているとは思えませんでした。