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14.02.2013 出島『海外ビジネスコラム』原稿

インドネシアで仕事をする時の小話的アドバイス 【乏しい環境での創意工夫】

 ある試作品を作る時に、内側から真円面に圧力を加える装置が欲しくなりました。日本人はすぐにある種のプレス装置を手配しようとするのですが、インドネシアのスタッフは港に行って、そこで売られている魚網に付けるゴム製の筒状のフロートを買って来ました。そして、それを膨らませると立派なプレスになったという訳です。

 道端のオートバイ修理工房などを覗いて見ると、様々な創意工夫された工具や冶具が転がっていることに気が付きます。日本でも今みたいに物がなかった江戸時代には、このように創意工夫に秀でた職人達が多くいたのだろうと感慨にひたったものでした。そして日本のものづくりの原点は、江戸時代にあるのではないかと、ふと考えたりもしたものでした。

 明治時代に入って日本は西洋に追い付けとばかりに産業化を進めた訳ですが、その当時にしても、今ほどの物が揃っていたとは思えませんので、江戸時代に蓄積した創意工夫の伝統が活かされたのではないかと思います。

 それと同じように、ある精巧な工業製品をインドネシアで作れないかと、現地のスタッフ達と挑戦したことがありました。当時の本社はそんなことは認められないとして、図面もサンプルも一切提供してくれませんでした。そこで仕方なく、日本から輸入した完成品を分解して、想像力も働かせて図面化することから始めました。

 一番大変だったのは材料を探すことでした。似たような性質の素材を探しては、それを供給しているところを訪ねて分けてもらうことを続けました。そのお陰で普段は行くことの無いインドネシアの僻地を体験することも出来ました。

 楽しかったのは集めた素材を使って部品を作る時でした。インドネシア人のスタッフは独特の創意工夫で、根気よく一つ一つ作り上げてくれたのですが、全く関係ない他の商品の日本からの技能指導者も、本社に知れると怒られるのを承知で、嬉々として手伝ってくれたことでした。

 色々と理由を付けて本社から来てもらった担当の取締役にその試作品を見てもらった時に、驚きと共に『ここまでやる気があるのなら本社も支援するからやってみたまえ』と言ってくれた時の喜びは一生忘れることが出来ません。

インドネシアビジネスサポート