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14.02.2013 出島『海外ビジネスコラム』原稿

インドネシアで仕事をする時の小話的アドバイス 【購買担当者がサプライヤー?!】

 大きな金額の取引ではなかったのですが、ある部品の加工委託外注のオーナーは実は当社の購買担当者だった、ということがありました。当の購買担当者には罪の意識は全く無く、会社のためにコストダウンに努めていると言い張るのには驚いてしまいました。

 その人間は生粋のジャカルタ人で、普通はオラン・ブタイウィと呼ばれ、江戸っ子みたいな彼らの理想的な生き方は、ベチャ(人力タクシー)のオーナーになり、それをベチャの運転者に貸し出し、彼らの毎日の売上から賃貸料を取って、日中は涼しいところで煙草を吹かしてのんびりと暮すことだと聞いたのを思い出しました。

 おそらく件の購買担当者もこれと同じような感じで、会社から受注した仕事を近所の無職の人達に下請けさせて、売上の一部を自分の収入としていたのでしょう。彼のインドネシア人の上司からは、これがジャカルタ人の文化だと言われ、それを罰するのは難しいとも言われました。しかし、その文化は会社では使わないように、予め了解させることがこちらの義務でもあると痛感しました。

 インドネシアの製造業のほとんどは華僑の事業家達で占められていますが、家内産業レベルでは多くのインドネシア人達が活躍しています。大きな資金を持たない彼らは、知り合いからの伝手を頼りに巧みに下請け仕事を見付けだし、お互いにその機会を融通し合う文化を作り上げています。これはインドネシア人の多数を占めるジャワ人の代表的文化、ゴトンロヨン(相互扶助)の一つと言っても良いでしょう。

 就業規則とか企業倫理とかよりは、この相互扶助の文化の方が優先されることが多く、またそれが彼らの信頼感と一体感を醸成していると考えると、頭ごなしに規則違反であるとして罰するよりも、それが出来ないような仕組みを、知恵を出して作らなくてはいけないのですが、それをやり残したまま駐在時代は終わってしまいました。

 2004年に初めて国民の直接選挙で選ばれて成立した民主政権以降、政府高官による汚職問題は年々酷くなるばかりで収まるところを知らない勢いです。その根底にあるものは件の購買担当者と同じものであるような気がしてなりません。

インドネシアビジネスサポート