13. 生産活動
13-1. 品質管理
1980年代後半にはインドネシアにおいてもISO9000の取得がブームとなりました。多くの地場の企業はこぞってその取得に走り、ISO9000のファイルを管理するための立派な部屋を用意して、訪問客には誇らしげに紹介したものでした。
しかしISO9000は品質管理体制を評価するものであり、製品の品質レベルを高めるものではないことを果たしてどれだけ多くの経営者が理解していたのか疑問です。品質とは作り込むものであると教えられた日本人にとっては、当初は取得のメリットにあまり意義を感じられなかったのもそれが理由と思われます。
しかし、インドネシア人とっては経営者ばかりではなく、生産現場のオペレーターに至るまで、ISO9000を取得しているからわが社の製品は高品質だと安心しているように見えました。これは、工場の通路に品質第一とか品質向上といったスローガンが書かれたポスターを掲げることで、品質が良くなると勘違いする国民性に通じるものです。
13-2. 納期管理
インドネシア人の時間に対する感覚を表現する言葉としてJam Karetと言うのがあります。Jamは時間、Karetはゴムで、伸縮自在のゴム時間と言う意味です。確かに約束した時間が縮むことは稀ですが、伸びることは日常茶飯事です。そもそも約束の時刻自体が曖昧で、明日の何時何分ではなく、明日だけと言うこともあります。さらに、インドネシア語の明日を表すBesokと言う言葉は、明日以降の意味もあるため、確認しないといつまでも待たされる羽目になります。
そんな文化を受け継いでいる人達に時間刻み、または分刻みの生産スケジュールに合わせて仕事をしてもらうには色々な工夫と努力が必要です。一番良くないのは、日本と全く同じ方法を押し付けて、出来ない時に『インドネシア人はだめだ』と決め付けてしまうことです。
具体的な対策となると会社の事情により様々ですが、共通して言えることは、納期を守って当たり前ではなく、守ったことに対する評価を、全員に目に見える形で与えることだと思います。日本の常識は日本でしか通用しないと肝に銘じておくべきです。
13-3. コスト管理
インドネシアは汚職天国というあまり嬉しくない評判を立てられています。政府高官による汚職事件はニュースで毎日のように報道され、独立機関としての汚職撲滅委員会が汚職官吏の摘発に多忙を極めています。これらのニュースを観ていると、赤信号皆で渡れば怖くないという、まるで汚職をしないと損であるかのような印象すら持ってしまいます。
公金に対するこの感覚は会社のお金に対しても似たようなところがあるようです。会社は無尽蔵にお金が出て来るところで、使わないと損みたいに感じている社員が多いと思って間違いないでしょう。仮に不必要なお金や費用を使っても、自分自身が損をする訳ではないと考えているのでしょう。
日本人は会社のお金であっても出来るだけ節約しようと工夫し、勿体ないと言う感覚で会社の物であっても大事に使おうとする文化で育って来ています。しかし、この常識も日本でしか通用しないものかもしれません。
上記の納期管理と同様、具体的な対策としては、コスト面での貢献に対して目に見える形で評価することだろうと思います。