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20.03.2014 現地責任者の必須予備知識

4. 調達・生産・納入

4-1. サプライチェーン計画:調達・生産・納入における需給調整

 日本の本社の特定の部門で仕事をしていると、サプライチェーンと言う言葉は聞いたことがあっても、仕事の中でそれを実感することはなかなか無いと思われます。その理由は、日本のほとんどの会社は長い時間の中で、サプライチェーンが既に出来上がっていて、性能や機能レベルは別として、特に意識をしなくても回る仕組みになっているからです。
 しかし、インドネシアにおいてゼロから工場を立ち上げるとなるとそうは行きません。自分でインドネシア工場を中心にしたサプライチェーンを構築しなくてはなりません。材料の調達先はどうするのか、生産体制はどうするのか、受注してから納入するまでの仕組みはどうするのか等々、準備すべきことは山のようにあります。
本社の各部門の支援を仰ぎながら必要な要因を粛々と固めていくことになりますが、案外忘れてられてしまうのが、インドネシア工場のサプライチェーン全体の需給調整をするための仕組みとルール作りです。
 材料調達計画については資材部門の人達が色々と考えてくれるでしょう。生産計画については生産部門の人達が色々と考えてくれるでしょう。受注から納入計画については物流部門の人達が色々と考えてくれるでしょう。では工場全体の計画につては誰が考えてくれるのでしょうか。
 工場に対する需要と工場の供給能力のギャップが原因で発生するであろう、在庫あるいは注残を適正なレベルで制御しながら、顧客の要求に応えて行くにはどんな仕組みとルールが必要となるのか。操業開始前にしっかりと考えておくべきです。

4-2. 資材・部材調達:サプライヤの開拓およびサービスレベル評価

 インドネシアにおいても日本国内と同様に様々な資材が調達出来ると思っている人はさすがにいないと思いますが、想像以上に条件が悪いことに衝撃を受ける場合もあります。特に中国と比べた場合に、地場産業のすそ野の広さの違いに落胆することでしょう。
 しかし、インドネシアで調達、生産して、どこで販売するのかによってサプライチェーン全体で発生するトータルコストを試算した結果で、本当に落胆すべきなのかを見極めなくてはなりません。
 そのためには、インドネシアで調達出来る資材は何か、その資材のサプライチェーンはどうなっているのか、自分の足で確かめることが大事です。インドネシアは資源が豊富なのですが、工業材料は中国や韓国から輸入しているケースが多いと言われます。それらのサプライチェーンを突き止めて、どこから調達するのが一番良いのか、確かめなくてはなりません。

4-3. 生産:生産活動の最適化と設備の定期保全

 インドネシアの工場で良い品質の製品を安く早く、そして安全に作るためにはひたすら5Sを浸透させることだと確信しています。しかし、それは決して5S用語のインドネシア語訳を工場内に掲載することだけではありません。
 整理:不要な物もなかなか捨てようとしません。整頓:使った後に元の場所に戻すことが苦手です。清掃:掃除は清掃員がするものと思っています。清潔:綺麗にペンキを塗ることが好きです。躾:決められたことを長期にわたり継続することが苦手です。
 日本と文化も生活環境も異なるところで生まれ育った人たちに、日本人の感性が生み出した5Sを浸透させるのは決して簡単なことではありません。毎朝、始業前に唱和させて済む問題でもありません。
 難しいことではありません。日本で実際に行っている事例をインドネシアで再現してみせるだけです。写真とかビデオを準備することも効果がありますが、一番良いのは現場で実際にやってみせることです。
 そして素直に実践している部門には、僅かな額または品物でも良いから報いてあげることを忘れてはなりません。もっと大事なことはこれらの指導を日本人も最低3年間は継続することです。

4-4. 納入:納入時の顧客満足度把握

 顧客満足度は何を持って評価すべきか迷う場合は、サプライチェーンカウンシルが提唱している評価指標を参考にすることをお薦めします。
 包括的な指標として提示されているのが『完全オーダー達成率』で、『①書類が完全かつ正確で(書類精度)、②さらに納入時に破損も無く(完全状態)、③納期を達成したオーダーの割合(%)。その内容は顧客の定義に基づく時間通りに(確約納期遵守率)、④すべての物品と数量(全量納入)、そして書類(パッキングリスト、船荷証券、インボイスなど)が整っていることを指すか。』と定義されています。
 ①の書類精度については、オンタイムで梱包票、船荷証券、支払請求書などを含むオーダーをサポートする正確な書類を伴うオーダーの割合、と定義されています。
 ②の完全状態については、仕様を満足し、正しく組立てられ、(使えるように)完璧に設置され、そして顧客により受領された損傷の無い状態で納入されたオーダーの割合、と定義されています。
 ③の確約納期遵守率については、顧客の当初のスケジュールまたは約束日に充足されたオーダーの割合、と定義されています。
 ④の全量納入については、全量が納入されたオーダーの割合(%)。約束された数量で顧客が受け取った注文品の件数を注文件数の総数で割ったもの、と定義されています。
 以上の指標を参考に、インドネシア工場からの納入時の顧客満足度を把握し、特定の顧客あるいは商品に異常値が見られた際には、お客様からクレームが来る前に対処したいものです。

4-5. 物流:商品搬送業者の評価

 運送料金、搬送ルート、積載効率などの面から比較して選択するのが普通ですが、インドネシアの場合、特に国内の他島に向けて配送する場合は特別な注意が必要となります。
 まず、トラック、鉄道(ジャワ島内とスマトラ島内のみ)、船、飛行機をどのように組み合わせて運ぶのかを確認しなくてはなりませんが、それを把握するためには関係するインドネシア国内地域の交通網に関する知識が必要となります。
 次に、それらのルートにおける盗難や交通事故、そして道路状態などを配慮した準備が整っているのかを確認しなくてはなりませんが、そのためには該当するルートについての情報を持っていなくてはなりません。
 自身でルートを実際に走破してみるのが一番確かでしょうが、それはなかなか難しい問題ですので、その地域出身者からの情報を集めるとか、調査機関に委託するなどの対策が必要でしょう。

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