8. 会計・税務管理
8-1. 管理会計:製造コスト、一般管理費、棚卸在庫の最適化
日本国内でのオペレーションと比べて、特に異なるものは、製造コストに占める直接人件比率、材料費に占める輸入税と諸掛、一般管理費に占める日本人駐在員の費用と思われます。インドネシアの物価と日本の物価は平均して10倍の格差があるため、費用単価のレンジは日本に比べて大きく広がります。1ルピアから1億ルピアまで漫然と節約管理するのではなく、優先順位を明確にしてメリハリの効いたチェックが大事になります。
また、インドネシアの輸入手続き環境は決して良いとは言えません。特にジャカルタ港の混雑は許容範囲を超えています。材料の多くを輸入に頼っている場合、かりにそれが直接輸入ではなく、現地での仕入先が材料を輸入に頼っている場合でも、無暗に在庫削減を進めるのは危険です。在庫は合理化の目標ではなく、コスト、品質、納期を最適化した結果の姿であると捉えるべきです。
8-2. 財務会計:債権、債務、資金運用の最適化
材料の輸入および現地取引先との決済などのため、通常はルピア、米ドル、そして場合によっては日本円の銀行口座が必要となります。
資本金、長期債務、長期債権は為替変動リスクの少ない米ドル建で所有し、為替変動リスクの高いルピア建の債権、債務、そして預金は出来るだけ必要最低限にすべきと思います。
また、ルピア、米ドル、そして日本円の間の為替レートによって、オペレーションコストは日々左右されますので、過去10年間くらいの為替変動と、その原因と思われる出来事との関係を勉強しておくことで、これらの為替相場の傾向を少しは予測することも可能となるでしょう。
しかし、特別な理由が無い限り、投機的な為替操作はすべきではありません。
8-3. 内部統制:伝票システム、パソコンシステムの監視
外国人は役職に関係なく会計帳票の決裁に直接関与してはいけませんが、取締役であれば、インドネシア人の経理課長が決裁した帳票の承認サインを牽制機能として設けることは可能です。
これは是非行うべきことですが、経理課長に質問をしたり、説明を理解したりするためには、複式簿記の基礎的知識が必要となります。
また、現地の会計帳簿は税法でインドネシア語または英語と定められているため、日本語ではなく、インドネシア語および英語での会計用語も理解しなくてはなりません。
仕訳とか試算表を作るなどの作業は経理のスタッフに任せ、会計法に則っているか否かは公認会計士に監査してもらえば済むのですが、日々の業務の中での不正を防ぐために、日本人による牽制機能は必須です。
8-4. 税務処理:前払税金、相殺、還付、確定に関わる処理の監視
インドネシアに進出している日系企業のオペレーション上の主な問題として常に取り上げられるのが税務問題です。インドネシアは徴税率が低いため、比較的透明度が高く、税金が取り易い日系企業は、税務署にとって優先度の高いターゲットですので、納税側としても税金制度は良く理解しておく必要があります。
特に、移転価格の疑い、すなわち、日本で利益が出るよう本社との取引価格を意図的に操作したと疑いをかけられないように、材料の輸入価格や製品の輸出価格を設定する際には注意しなくてはなりません。